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フォト&エッセイ 遮光器土偶挑戦記

 すでに御存知の方もいるかもしれませんが、僕は動物のカメと、縄文時代の土器や土偶が好きなんです。とくに青森県亀ヶ岡遺跡出土の遮光器土偶が好きなので、ペンネームは両方に引っかけてつけています。今回はその遮光器土偶を自作した時の模様をお伝えしたいと思います。
 えっ、そんなものはいいから、さっさとまともな怪談を書けよ、って? まあ、そう言わず……(汗)。こういう時でないと、なかなか人に見てもらう機会がないもので、どうかしばらくおつきあい下さい。

 僕は土偶作りを某所で少しだけ習った経験があります。しかし、そこで「遮光器土偶が作ってみたい」と、口にしたところ、「あれは中を空洞にしなきゃならないから難しい。まずは埴輪をちゃんと作りなさい。それからでないと無理だよ」と、言われました。確かにごもっともなのですが、僕はどうもあののっぺりした埴輪というヤツが好きになれない。埴輪に対する愛が湧いてこないんだなー。愛がないものを作っても、いいものはできそうにないし、趣味として楽しくもない。そこで無謀と承知の上で、いきなり遮光器土偶制作に挑むことにしたんです。ただ、さすがに指導する方の前ではやりづらかったので、自宅で自己流でやることにしました。
 自宅に作業場があるわけじゃないから、畳6畳の和室にナイロンシートを敷き、その上にセメントを捏ねるための大型プラスチックケースを置いて作り始めました。一部屋塞がっちゃったし、準備や後片付けもなから大変。PCに向かって小説を書くのが、ものすごくラクに感じられたりしました(笑)。
 なお、制作中はモデルとして、博物館に置いてあった〈ガチャガチャ〉で出したプラスチック製のレプリカと実物の写真のコピー(前後左右)を利用しました。

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 写真はありませんが、市販されている陶芸用の粘土に川砂を10対3の割合で混ぜ、よく練ります。やはり土器や土偶は野焼きで焼くもの。温度が不安定になりがちな野焼きでは、粘土のみだと途中で割れてしまうのです。上の写真は〈輪積み〉と呼ばれる技法を使って、次第に形ができてきた土偶。タオルを被せているのは、成形途中で乾いてしまわないようにするためです。これだけの作品になると、僕のような素人にはとても1日ではできないので、湿らせたタオルやビニール袋を被せて保存し、何日もかけて作ることになります。夏に作ったので、乾くのが早くて困ったこともありました。

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 5日ほどかかって、成形完了まであと一歩のところ。何と、左腕からオーラが出ているじゃーないですか(笑)! 実はここまで来るのに失敗すること7度。いつも小さな足の部分が壊れてしまい、倒れて全壊する、というパターンでした。完成直前に倒壊したこともあります。そのため、足は実物の土偶よりもかなり太く、大きくしてあります。そういえば実物も足が片方ありませんが、意外と制作途中で壊れていたのかもしれないなーとか思いました。

 ついでに言うと……失敗を繰り返していた頃には、毎日土偶のことばかり考えていたので、眼鏡をかけた女性を見ると、みんな土偶に見えてきて困りました(笑)。

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 成形完了から1ヶ月後、横から見たところ。遮光器土偶というと、メタボな女神像、というイメージがありますが、作ってみると、胴がくびれていて腰が太く、女性らしい美しいフォルムをしていることに気づきます。足が極端に小さいのは、神様が歩いて逃げ出さないように、わざと小さく作る習慣があったんだろうか? そんなことも制作しながら、ふと考えたりして……。縄文人の考えていたことがわかるような気がしてくるから不思議です。
 それにしても、何でここまでやるんだ? というくらい、複雑かつ緻密な文様。文字を持たなかったと言われる縄文人は「複雑なものが作れる人ほど有能で頭が良い」とでも考えていたんでしょうか?

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 1ヶ月余り乾燥させてから野焼きを行うことにしました。実は野焼きをやるのも初めてです。今はやたらにやると消防署から注意をされるそうなので、市のバーベキュー広場を利用することにしました。事前に申し出なくてもOKとのことで、実に都合がいい。焼き方は経験者から聞いたり、本やネットから得た知識を元にしたものです。一緒に焼くのは倒壊して唯一無事だった前作の顔と、倒壊防止対策として作った足輪一対。器ではありません。

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 まず、ライターで新聞紙を丸めたものに点火、その火をいったん小枝に点けてから薪へと移していく。薪は初めに燃えやすいスギ材を使用し、火力がアップしたところで、ナラ材を投入します。ナラ材は長時間燃え続けてくれるので、薪としてとても優れているとのこと。そういえば、ナラやクヌギのようなブナ科の木って、生えてる時にはカブトやクワガタが捕れるし、シイタケの原木にもなるし、最高の木だいねー。
 なお、イケメンじゃないので、顔の公開は勘弁して下さい。才能がないのと同様、年々顎がしゃくれてきているのが悩みの種。縄文人も受け口だったらしいので、遺伝なのかな?

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 徐々に火に近づけて炙っていきます。いきなり火中に入れれば、急激な温度変化により、大破してしまうのです。実はこの時点ですでに右足の甲と右手の掌が取れていました。自宅から現場まで車で運ばなければならず、輸送中に外れてしまったのです。しかたないので別に焼いて、後から接着することにしました。のっけから先が思いやられる展開ですが、結果やいかに……。

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 全体に熱が行き渡るように、今度はうつ伏せにして炙っていきます。本当は直立した状態で炙りたかったんだけど、足が片方取れていたせいで、うまくいかなかったんだいね。

 おまけに、よりによって雲行きが怪しくなってきました。雨が来れば一大事。野焼きは中止せざるをえません。まずいなあ……。

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 最初に燃やした薪が熾火(おきび)になったので、もういいだろう、と、その上に載せます。蒸し焼きにする感じですね。当然のことながら、軍手をはめていても、熱くて手で触れることはできないので、作業にはトングや火を点けていない薪を使います。

 最初は壊れてもいい足輪を載せて様子を見ることにしました。すると、パリン! という音が弾けて、いきなり亀裂が入ってしまったんです。駄目だ、早過ぎたか……。

 少し時間を置くことにしたものの、空はますます薄暗くなってくる。だんだん焦りが出てきて、まだちょっと早いかな? と、思いながらも、土偶を載せてみました。しばらくして、パキッという嫌な音! どこかが割れたらしいぞ(汗、汗、汗)。

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 中は空洞なんですが、薄いのは作りづらかったので、かなり厚手に作っていたんです。とくに足の部分を。そこにうまく火が通っていなかったようです。

 まあ、割れた部分は後で接着剤でくっつけることにして……。写真はありませんが、1度うつ伏せにして焼き、また仰向けに戻してから、火力を徐々に上げていくことにしました。薪を並べて再び火を起こします。何だか火葬の光景みたいですな。

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 薪を積み上げ、これでもか、といわんばかりにガンガン燃やします。煙が目に入って痛いし、かなり熱かったけれども、負けずに薪をぶち込みました。こちらの思いが天に通じたのか、幸い雨はまだ落ちてきません。が、ここでまたしてもハプニング。火中から、パキッ! という炸裂音が――。

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 後から考えてみると、これもミス。左目の上に焦げた薪を長い間載せていたんです。

Photo_24

 最後はもう一度、うつ伏せにして焼きました。薪が燃え尽きたところで野焼き終了。両方の腿の部分が欠損しているのがわかりますか? 

Photo_25

 焼き上げてから、今度は自然に冷えていくのを待ちます。この頃からぽつぽつと雨が落ちてきました。傘を差して自分も土偶も濡れないようにします。

 それにしても……片目が黒く焦げてしまったことが悔やまれるよなー。何だか神々しい女神の姿というよりは、DVの被害者か、ノックアウトを食らった女子格闘家のような、痛々しい姿じゃないですか(苦笑)。

 本物の遮光器土偶はこの後、杉などの落ち葉の中に埋め込んで炭化させ、金属的な光沢を出していたらしいのですが、今回はそこまで専門的なことはやりませんでした。

 この自然冷却の最中、小雨が降ってるというのに散歩をしているおじさんがいて、興味があるらしく、話しかけてきました。「いい趣味ですねー」と、何度も言うので、「いやー、失敗作ですよ」と、頭を掻きつつ答えると、「だったら、私の知り合いに陶芸家がいるから、この次はそこへ持っていって、窯で焼いてもらえばいい。私の名前を言えば大丈夫だからね」と、勧めてきます。土偶は野焼きで焼くことに意義があるのに……。よけいなお節介だと思ったけど、その場はお礼を言って別れました。亀ヶ岡は偏屈者ですが、人づきあいができないわけじゃないんです。

 最後は〈立つ鳥跡を濁さず〉で、燃えカスを含むゴミを全部拾って帰りました。

Photo

 足輪は一つが完全に割れ、もう一つにも少しヒビが入っていました。無傷だったのは〈前作の顔〉だけ、という惨憺たる結果。

Photo_3

 いちおう、文様を入れてみたり、紐を転がしてみたりして、それっぽい雰囲気にはしてたんです。ちなみに僕はこのX型の文様がとても気に入っています。「家紋にしたい」と思うほどに。

 それでは、肝心の遮光器土偶を見ていただきましょう。まずは野焼きをする前の、正面と背後から写した画像をご覧下さい。

Photo_26

Photo_27

 before↑

 after↓

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Photo_6

 美容整形なら大失敗の巻、だな(涙)。焼かずに済むなら、焼かない方がよかったような……(苦笑)。

 破片も持ち帰って接着剤で修復してみました。本物の出土品もほとんどがバラバラに壊れた状態で発掘されるので、「焼いた時に割れた土器や土偶を接着するのも、本物っぽくて味がある」という人もいるんですが、完璧主義者の亀ヶ岡には悔しい結果となりました。何度もやってみれば、もっと上手にできるようになるんでしょうが……。

 とはいえ、労作には違いないので、ここまで見てくれた方は、迷惑ついでにあと2枚、画像を見ていって下さい(半ば無理矢理)。

Photo_7

 こうして見ると、顔はトンボみたいでもあり、ウルトラマンエースっぽい感じもしますね。

 あ、ウルトラマンエースなんて、若い人たちはもう知らないのかな?

Photo_4

 怪談のみが目当てで当ブログへ来てくれてる方が、もしいるとしたら、すみません。ただ、僕の中では土偶のように呪術の要素を持ったものは、怪談や妖怪などと繋がる部分があるような気がしてならないのです。公言すると、たいてい否定されるんですけどね。

                                           WKE

参考文献 『縄文人になる!』関根秀樹著 山と渓谷社

( 注……亀ヶ岡は野焼きに関してはズブの素人です。これからやってみようと思っている方には参考にならないと思うし、真似しない方が賢明だと思います。それでもやってみたくなった方は、火を扱う際に十分用心して下さい。とくに未成年の方は保護者同伴で。そもそも冬場は野焼きに向きません。火災などの事故が起きる場合もあるので、念のため)

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縄文土偶」カテゴリの記事

コメント

>侘助さん

初めまして。WKEへようこそ!
コメントありがとうございます。
ヒッポリト星人! 懐かしいですね~。ウルトラの父も作らないと、ブロンズ像のままになってしまいますよね(笑)。
なるほど。接着剤も透明にならないタイプのものを使ってしまったので、それもちょっと失敗したなー、と思います。
高さは40cmくらいですが、重量は、妻が「ホントの体重を見たくない!」と言って、体重計を捨ててしまったので測れないんですよ~。でも、本物に比べると、かなり厚めに作ってあるので、けっこう重いですね。

投稿: 亀ヶ岡重明 | 2008年12月16日 (火) 21時23分

>ブルーさん

記念すべき初コメント、ありがとうございます!
いや~、遮光器は成形するのも焼くのもホントに難しかったですねえ。縄文人も相当練習していたんだろうなあ。
ブルーさんの文章も独特の味があって楽しいです。またよろしく。

投稿: 亀ヶ岡重明 | 2008年12月16日 (火) 21時05分

初めまして。お邪魔させて頂きます。

ヒッポリト星人にタール漬けにされてブロンズ像になってしまう訳ですね。分かります。

素晴らしい出来映えですね。
破損箇所が接着剤ではなく,漆喰等で補修されていたら,博物館展示の実物と見紛うばかりです。
(ただ,当時と同じ手法で作っている以上,年代の差こそあれ,これも「本物」であることは間違いありませんが)

サイズは画像から推し量ることが出来ますが,重量はいかほどになるのでしょう?

投稿: 侘助 | 2008年12月16日 (火) 15時03分

こんばんは!土偶、焼く前の姿、本当にうっとりしますなぁ♪うまい!うまいよ!焼くのって難しいんですね。縄文人も亀ヶ岡さんみたいに「ひー、割れた!焦りすぎた!」とか言いながら、何回もトライしたんでしょうかねぇ。なんかとっても微笑ましい♪

投稿: ブルー | 2008年12月15日 (月) 20時33分

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